第8回「奈良工芸の粋」展 令和6年3月14日(木)~18日(月)
@名勝依水園・寧楽美術館

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令和6年3月14日(木)~18日(月)
@名勝依水園・寧楽美術館

出品作家紹介 樽井 宏幸 氏(漆芸)

 現在奈良漆器に携わる作家のなかで、宏幸氏の作品は異質である。奈良漆器といえば、漆の塗りのなかで最も丁寧とされる蝋色塗の地に螺鈿や平文で装飾を施すのを特徴とする。これに対して、宏幸氏の作品には、装飾のない朱塗りの器が多い。

 「日常の道具として使えるものを」との思いで漆器に取り組んできた結果、評判が評判を呼び、現在その作品は品薄状態にある。

 漆職人の父親を手伝いながら、神社仏閣で実際に使用されている美しい漆器を間近にみてきた。「堅牢(ろう)さと美しさがなければ、いずれごみとして捨てられる。つくり手として、それほど残念なことはありません」

 宏幸氏のつくる朱塗りの漆器は、一般に「根来塗」と呼ばれる。和歌山県の根来寺にその手の器が多く伝わるからだ。最近、宏幸氏は、自分の朱塗りの作品を「奈良塗」と呼んでいる。「奈良の寺社には、根来寺よりはるか以前にこの手の器がありました」と胸を張る。宏幸氏の実直さは、奈良塗を現代生活に確実に根付かせている。

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