出品作家紹介 小西 寧子 氏(漆芸)
「漆器は高価だから、その良さがわかる手前のところで敬遠されがちです。この高い敷居を何とかできないか、と思いながら仕事をしています」。
小西氏は、螺鈿の人間国宝の北村昭斎氏の長女として、漆器に囲まれた環境で育つ。現在、漆器作家として活躍する一方で、主婦の顔も持つ。「主婦の視点から少し背伸びすれば手に入る価格で、世界にひとつだけの宝物を持ってほしい」という思いから作り始めたのがアクセサリーや日用品。漆と螺鈿の技法を駆使した小物類。「装身具は人の目に留まりやすい。日用品も使ってはじめて良さがわかるもの」と小西氏は話す。
一方で、本格的な漆作品にも取り組む。「本格作品で用いた技法をそのまま小物で使っているので、わたしのなかで両者はいつも同一面でパラレルに存在しています」。「高校のときにラリックやクリムトなど、アールヌーボーの美術に強い影響を受けました。蒔絵や螺鈿と同じ要素がつまっていて」。
小西氏の気取りや衒(てら)いのない語り口と同じように、その作品はストレートに漆器の新鮮な魅力を伝えてくれる。